ドイツ製品と聞くと、質実剛健、趣味性よりも実用性、精密、高価、老舗といったイメージだろうか。
筆記具界ではモンブラン、ペリカン、ファーバーカステルなど。
しかし今回は、さほど剛健でもなく、まあまあ趣味性があり、そこそこの価格で、会社はとうに潰れてしまったドイツの筆記具ブランド、kaweco(カヴェコ)のお話。

<Kaweco>
Kawecoは、ハインリッヒ・コッホ(Koch)と、ルドルフ・ウェバー(Weber)により、1883年にドイツのハイデルベルグで創業され、二人の名前からKawecoと名付けられました。
1909年に画期的な技術を取り入れた、安全繰り出し式のセーフティ万年筆を発売したことでも知られています。
また、1930年代に発売された「Kaweco Sport」は、1972年のミュンヘン・オリンピック開催の際に公式ペンとしても認定されました。
「Kaweco Sport」はクラシックなイメージの中に、機能性、携帯性を兼ね備えた製品となっております。
1976年にKawecoは一旦その幕を閉じましたが、1995年にニュールンベルグのグットバレット社により復刻されました。その後、当時の面影を残した数多くのペンが復刻されています。

プリコ株式会社(輸入代理店)HP

Kawecoの歴史を見ていただいたところで、私のアイテムをご覧いただきながら、その魅力などを話していこう。

Kaweco Special

スペシャルは、後半に登場するSportとデザインが異なり、鉛筆のような細身で八角柱の金属軸を持ち、Kawecoのラインナップにあっては凡庸なデザイン。
万年筆、ボールペン、ペンシルがあり、ペンシルは「神シャープ」と評価が高い。

私のペンは昨年末の「Favorite Stationery 2020」でも紹介したBlue Limited Edition。
深青とシルバーパーツの調和が美しい。
国内通販では法外な値段で売られているが、海外ショップで探せば、今でも適正価格で手に入る。

Kaweco BRASS SportとLiliput

ブラスはその名のとおり軸に真鍮を使用しており、ずっしり重たく、経年変化を楽しむことができる。
ペンシルの芯径は0.7mmで私は4Bを入れている。太軸かつ重いので正直書きにくい(笑)
この2本は主に自宅用としている。

リリプットは「小人」。
そう、ガリヴァー旅行記に出てくる小人の国のことだ。
色えんぴつのような円柱で、キャップ収納時は10cmにも満たない。
軸は鉛フリーのエコブラスで、こちらも経年変化が楽しみ。
普段は赤ペンとして職場で活躍している。(後述)

なお後日、真鍮のステーショナリーに特化した記事を書こうと考えているので、今回はこのくらいで。

Kaweco AL Sport

スポーツはカヴェコの代表的な八角柱の軸を持つペンで、アルミをはじめ、先述した真鍮のほか、カーボン、樹脂、スチールなど、様々な素材とカラーバリエーションがあり、多くは万年筆だけでなく、ボールペン、ペンシル、ローラーボールが揃うという充実ぶりだ。
私が持つペンは、真鍮以外はすべてAL(アルミ)。
次は、最近手に入れたお気に入りのAL3本を紹介しよう。

Golden Espresso Limited

アメリカ限定販売で、アメリカから個人輸入した。
ニブ(ペン先)はスチールのゴールドカラー。
キャップにエンボスで刻まれたテキストがいい。

Midnight Green Limited

ebayで香港のショップから購入。
実はこれ、買ってからネットで調べたものの、意匠がよくわからない(笑)
どうやら2020年に台湾か香港で限定発売されたらしい。
ニブはスチールのブラック。

Petrol Limited

2019年にオランダとベルギー限定で発売。
ニブはスチール。
私が大好きなペトロール・ブルーの軸だが、知った時にはすでに売り切れ。
それから約2年、宝探しを続けて、最近やっとベルギーのショップでデッドストックを手に入れることができた。
発売当時、現地ショップなどでは「これ、ホントはグレーでしょ?」論争が巻き起こったとか。
ちなみに、ガソリンのことをイギリスでは「ペトロール」と言うけど、オランダとベルギーではどうなんだろう?

クリップについて

Midnight Greenは初めからブラックのクリップが付いてきたが、Kawecoのクリップは基本的に別売り。
私の場合、キャップの象嵌とニブの色に合わせて金色や銀色のクリップを買ってあるのだが、正直なところクリップのないデザインの方が落ち着いた感じで好きだ。

インクについて

少々本題から話が逸れるが、周辺情報として普段使っているインクも紹介しておこう。
私の場合、万年筆はコレクションではなく道具としてガシガシ使いたいので、使うインクもリーズナブルなカートリッジを選んでいる。
外出先や会議中にインクを切らした場合、呑気にボトルから吸引して補充するわけにはいかないので、仕事には手軽に持ち運べ、素早く交換できるカートリッジがおススメ。
(事前にインク残量を確認するのが万年筆使いの流儀なのだが・・・)
最近、私が好んで使っているのは、フランスのエルバンの6本セットで、1本あたり90円程度。
ひと言で「赤」と言ってもバリエーションが豊富で、ネーミングも楽しい。

エルバンは、少なくとも私が日ごろ使う職場の書類や手帳では滲みも裏抜けも見られず、水濡れにも何とか耐えられるという、値段の割には優秀なインクだ。
Kawecoにもインクはあるが、自分で耐水性を実験した結果、水濡れにやたら弱いことがわかったので、使わないことにしている。

Kawecoのココがいい

◆リーズナブルな価格設定
国内でのKaweco万年筆の販売価格は、定番品で10,000円+税ほど。
「ペン1本に1万円!」と思われる方もいるだろうが、モンブランやペリカンの場合、同じ価格帯のペンを探す方が困難だ。
また、スカイライン・シリーズなど樹脂軸のラインは3,000円程度で買えるので、「万年筆に挑戦してみよう!」という方にとって、初めての万年筆にはピッタリだ。

◆ニブが交換できる
万年筆入門用として、リーズナブルであることとに加え、これも大きな魅力のひとつ。
Kawecoの多くの万年筆がニブをユニットごと交換できるようになっており、スチールなら1,500円+税ほどだが、14Kのペン先(いわゆる金ペン)はペン本体より高価だ(笑)

そのため、M(中字)を買って、太いと思えばFやEF(極細)に換えてしまえばいい。
自分の筆圧や書き癖に柔軟に答えてくれるだろう。
ただし、無闇にニブを触るとインクフローに大きく影響するので、自分で交換する場合は自己責任で。
フローの調整方法がわからない人はショップにお願いした方が無難だ。

◆趣味性と実用性、両方の顔を持つ
数万、数十万もするペンではないので、普段使い用にと割り切れば、ガシガシ使える。
コンパクトなサイズに合わせてペンケース類が用意されており、ケースごとポケットに収めて持ち歩ける。(だから基本的にクリップは不要なのだ)

趣味性については、カラーバリエーションが豊富で、特に樹脂軸のペンは手軽な価格設定であることから、集めて並べて眺めるというファンもいる。
また、企業やショップとのコラボ商品が限定で販売される機会も多く、コレクターは情報収集にいとまがない。
私の知る限り、今のところディープなマニアやコレクターは多くないので、出遅れなければ入手できる可能性は高い。
ただし、転売ヤー等による法外な値段での販売は、むしろ日本国内で横行しているのでご注意を。

Kawecoのココが残念

◆別売りクリップ
800円+税。ちょっと高いんじゃない?
それに、ピッカピカの金、銀、銅って、正直、安っぽい(苦笑)

◆AL Sportのデザインなど
ペンシルとボールペンはちょっと太すぎて書きにくい。
ブラスはちょっと重すぎ。万年筆もペンシルも長時間筆記に向かない。

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ということで、Kawecoの魅力、わずかでも伝わっただろうか。

私の場合、全て海外通販で購入したが、インクフローなどトラブルは皆無で、書き心地は良好だ。
長い間使ってきて、残念なところもあるにはあるが、欠点がほぼ見つからない。
万年筆に興味がある方、これから使ってみたいという方は、ぜひ1本、手に入れてみてはいかがだろう。
Kawecoのよさ以上に、万年筆は決して特別でもなく、扱いが難しい筆記具ではないことがわかっていただけると思う。

それでは、Adiós!