「創世記」11章

全地は同じ発音、同じ言葉であった。

時に人々は東に移り、シナルの地に平野を得て、そこに住んだ。

彼らは互に言った、「さあ、れんがを造って、よく焼こう」。
こうして彼らは石の代りに、れんがを得、しっくいの代りに、アスファルトを得た。

彼らはまた言った、「さあ、町と塔とを建てて、その頂を天に届かせよう。そしてわれわれは名を上げて、全地のおもてに散るのを免れよう」。

時に主は下って、人の子たちの建てる町と塔とを見て、言われた、「民は一つで、みな同じ言葉である。彼らはすでにこの事をしはじめた。彼らがしようとする事は、もはや何事もとどめ得ないであろう。さあ、われわれは下って行って、そこで彼らの言葉を乱し、互に言葉が通じないようにしよう」。

こうして主が彼らをそこから全地のおもてに散らされたので、彼らは町を建てるのをやめた。

これによってその町の名はバベルと呼ばれた。
主がそこで全地の言葉を乱されたからである。
主はそこから彼らを全地のおもてに散らされた。

『聖書[口語]』日本聖書協会 (1955)

絵画に見る「バベルの塔」

「バベルの塔」といえば、このピーテル・ブリューゲルの絵だろう。

以下、絵画や挿絵となった「バベルの塔」を見てみよう。(順不同)

ピーテル・ブリューゲルのように複数の作品を描いた作家もいれば、作者は違えど並べるとそっくりな作品もある。(模倣?)
誰も見たことのない想像の建物(実在したとの研究もある)だが、円錐形+らせん階段状が多い。ただ、以下のような変わり種もある。

ところで、バベルの塔は(あったとすれば)どこにあったのか?
諸説ある中、ここには有力候補地のひとつ、古代シュメールの都市ウルを挙げておこう。

書籍の挿絵など

最後は「AKIRA」の大友克洋氏によるカットモデル。驚愕!

現代の「バベルの塔」?

このバベルの塔の項を現代に書き継ぐとすれば、どうなるだろうか。

それから数千年の後、全地に散らされた人々は、数千もの自然言語とは別に新たな人工言語をつくり出した。
そして、無数の電子計算機同士を結ぶネットワークをつくった。

それは全地を覆う新たなバベルの塔であった。
世界に散らされた人々を一つにつなぐものとして大きな希望を与えるものであったが、新しい混乱を全地にもたらすものでもあった。

詐欺、陰謀、誹謗や中傷、あるいは、欲情、誘惑、怨念、殺意、死。何億人もの人間が検索窓に文字を打ち込み続ける。

キーボードを叩き、マウスを動かし、金を儲け、日記を公開し、おしゃべりを続ける。

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UAE・ドバイのブルジュ・ハリファは高さ829.8m、サウジアラビア・ジッダに2021年開業予定のキングダム・タワー(ジッダ・タワー)はついに1,000mを超える。
人類は再び創世記にある過ちを犯そうとしているのだろうか・・・
『さあ、町と塔とを建てて、その頂を天に届かせよう。そしてわれわれは名を上げて、全地のおもてに散るのを免れよう』